【ごちうさ】地図には載らない”未知”へのコンパス
まんがタイムきららMAX2018年5月号に掲載された「ご注文はうさぎですか?」の感想記事です。
【以下、ネタバレ注意】
最初「なんでティッピー喋らないんだ…?」と本気で思ってしまいましたが、一応チノの腹話術という設定だということを素で忘れていました。描写されたのってハロウィン回ぶりでしたっけ? …なんて前置きは必要ないと思うので、今回もあらすじとかも飛ばして書きたいことだけ書いていきたいと思います。
扉絵はチノから見たココアの姿です。めっちゃ美人ですね。
物語はチノとの絡みではなく、ココアの姉・モカから電話がくるところから始まります。
明確には描かれていませんが、モカが今日電話してきたのは恐らくチノの受験を知って、ココアが不安になっていないか気になってのことでしょう。
扉絵は完全にお姉ちゃんの顔をしていますが、モカからの電話と分かった瞬間にする顔が完全に妹というのが、DMSでの「ここでは妹」という発言に繋がってきます。
ココアが受験に行った際、不安で仕事が手に付かなかったことも、モカも完全無欠の人間ではないから。あの貫禄は影での努力から生まれたものだということは前にも描かれました。そして、それは全て妹を思ってのこと。
ココアはチノに本当に自分と同じ高校でよかったのかを聞くべきか否か迷っていることをモカに打ち明けます。
聞けない理由はP.75の6コマ目「怖くて…」のとおり、それがデリケートな問題であって、チノの姉であるココアにとっては、恐らく僕たちが思っている以上に深刻に考えています。
そして、それを聞いてモカは、ココアの背中を押します。
結果、顔を合わせて聞くことが出来ましたが、そもそも「何故、ココアはチノにそのことを聞く必要があると思ったのか」。
ココアとチノがその日の夜に顔を合わせたときにココアが聞いた台詞のように、ココアは自分がチマメの仲を引き裂いてしまったのではないかという不安があったのです。
この不安についてもっと詳しく言うと、今ココアは高校2年生で来年からは3年生です。しかしチノは来年から高校1年生。ココアとチノが高校を共にして生活できるのはたった1年間だけなのです。一方、マメのお嬢様高校に行けばこれまでと同じくチマメ3人で共に3年間歩むことができます。
ココアはこの「チノが自分と同じ高校での一年間に惑わされているのではないか」という疑問・不安があったのです(なので、「なんて自意識過剰な」という返しをされたわけです)。
もし、チノにとっての最大限の幸せを手に入れることができる場所がお嬢様高校だとしたら。
姉は妹の先に立って手を引くような存在です。間違えたことをしていれば正してあげることも姉の役目。
ココアはチノが自分を志望動機にしていないか、姉として不安で、それを解消するには本人に聞く他に方法がなかったのです。
次に、ココアとチノの高校志望動機について。
P.77の5~8コマ目では、ココアの志望動機が「街にわくわくした」以外にも何かあると描かれ、「でも私はこの街に来てから、来る前よりずっとわくわくしてる」とココアが言います。
そして、夜のシーンではチノがココアと同じ志望動機だったことが分かります。
それは「その高校が一番わくわくした」と、もう一つ「いろいろな人と出会ってみたい」。
(ここに来て、ココアや千夜の通う高校が地域外からの受け入れ態勢が整っている高校だということが明らかにされるとは…)
ココアの「街にわくわくした」以外の動機とは「いろいろな人に会いたい」ことなのです。
一旦戻って、ココアの「でも私はこの街に来てから、来る前よりずっとわくわくしてる」の意味を確認します。
この話だけで描かれていることではないのですが、現在のごちうさは木組みの街・ラビットハウスといった世界を基点とし、もっと外側にある「未知のセカイへの挑戦」を中心に据えていると僕は考えています。
「セカイがカフェになっちゃった!」はそれを象徴するような曲です。
カフェ(よく知った場所)でセカイ(未知の場所)を待つのではなく、カフェの壁を取り払ってセカイに向かって自ら飛び出していく。カフェにセカイを取り入れるというよりかは、セカイそのものをカフェに変えていくようなアプローチの仕方。
「未知のセカイへの挑戦」とはそういった意味で書いています。
チノのいろんな人と会いたいというのも未知のセカイへの挑戦です。
そして、ココアにとっても、この高校を選んだのは未知のセカイへの挑戦ということになります。
ココアも、よく知った世界(実家)から全く知らない場所(木組みの街)へと行くためこの高校を木組みの街を選んだのです。
未知のセカイへの挑戦。それにココアは、来る前からわくわくしていたのでしょう。
では、来る前よりずっとわくわくしてるとは?
未知のセカイへの挑戦が終わったはずの、来た後にわくわくするとは?
答えは、単純にまだその挑戦が続いているからだと思います。
実家から木組みの街への挑戦。そして、今もココアは木組みの街で、木組みの街から更に未知のセカイへの挑戦をしているのです。きっと、その未知のセカイからその先にあるまた別の未知のセカイへと…
わくわくが乗算的に増えていく、このカフェの広がりを「来る前よりずっとわくわくしている」と言ったのでしょう。
高校生組の写真をもつチノについて。
「学校離れてても大丈夫って教えてくれたの、ココアさん達じゃないですか」の意味についてです。
確かに、高校生組はみんな離れざるを得ないような違うところがあるんです。
リゼとシャロはお嬢様高校、ココアと千夜はそうじゃないほうの高校。ココアとリゼはラビットハウスで、千夜は甘兎庵、シャロはフルール。
必ずどこかしらで別のものがあって、離れなくてはいけなくなるんです。
でも、離れているからといって疎遠になるわけではない。
離れていても、友達でいられる。
チノはその高校生組の姿を目指しているのでしょう。
彼女たちならこんな日常もあったかもしれない、そんな写真を持ちながら。
チノにとっての未知のセカイとは、新たに始まる高校生活のこと。
不安になってしまうことがあっても、楽しいことつまり目標になるような人・事を見失うことなく、扉の外のセカイへと踏み出していく彼女。
地図には載らなくても、誰にだって目指せ、行けられる場所”未来”へのコンパスは、もうずっと前に手に入れていたのです。
今後、更に広がっていく世界。
ココアと千夜のクラスメイトたちがチノとより深く関わったり、マメはお嬢様高校でも新しく関係をつくったりするのでしょうか…とても楽しみです。
感想は以上です。
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