Cupful of Rabbit

きらら作品の感想を主に書いていきます。

【どうびじゅ】酒井桃音と竹内黄奈子

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相崎うたう先生の「どうして私が美術科に!?」第1巻の感想記事です。

 

この記事では、作品の中でも特殊な関係を持つ主人公「酒井 桃音」とその居残り仲間「竹内 黄奈子」の2人について書いていきます。

 

【ネタバレ注意】

 

(上の画像はこちらを少し加工したものです)

 

 

まず、桃音と黄奈子の二人と他三人(紫苑・蒼・すい)の決定的な違いについて書きます。

桃音と黄奈子は他三人とは違い、望んで美術科に入ったわけではないこと。

このことは、桃音は間違えて入学し黄奈子は両親の影響でと分かりやすく描かれています。

(他三人の具体的な入学理由は1巻では描かれていませんが、自身の意思に反しながらも入学したと読み取れるような描写はありません)

 

桃音は単純(?)に入る科を間違えた。黄奈子は両親の熱意に負けてしぶしぶ入学。

理由は違えど、望まずに美術科に入学してしまった二人。

この「どうして私が美術科に!?」な二人の関係について考えていきましょう。

 

二人はお互いにお互いを支えあっている関係だということは明白でしょう。

望んで入学した三人が美術科に居る理由は何でしょう。友達の存在などもあるとは思いますが、一番の理由は美術科に入ろうと思えるほどに「美術が好き」だから、ではないでしょうか。

一方で二人はそうという訳では無い。美術が嫌いとまでは言ってはいませんが。

 

第1話(単行本P.7)で桃音は「黄奈子ちゃんがいて良かった」、黄奈子は「桃音と出会えて良かった」のようなことを言っています。

そして、第12話(P.101のお見舞い回)で桃音は「黄奈子ちゃんが『桃音がいて良かった』と言ってくれて嬉しかった」、黄奈子は「私が美術科にいる理由を桃音がいるからにしてもいい?」のようなことを言っています。

桃音は自分が美術科に入った意味を見つけた。黄奈子も自分が美術科に入った意味を見つけた。それはつまり、桃音は黄奈子が美術科にいる意味となり、黄奈子は桃音が美術科にいる意味となったということなのです。

美術科に入ったところで「何も出来ない」はずだった二人。しかし今日では、お互いがお互いにとってとても大きな意味を持っているのです。

 

 お見舞い回の話をもう一つ。

上のやりとりも感動的ですが、この回にはもう一つ見所があります。

黄奈子の合同絵に桃音が筆を入れるシーンです。

 

 黄奈子の合同絵は「何者にもなれない自分」を表したもの。「自分の将来」をテーマにした制作なので、これには黄奈子の「これからも」続いていく大きな不安が描かれています。何をしたいのかという目標が黄奈子には無いのです。自分は何かになれそうという希望も無かったのでしょう。

しかし、その後桃音から「黄奈子ちゃんがいて良かった」と言われます。

そこで「誰かに頼られている」ことを実感します。

頼られるということはそこに居場所ができるということ。

ここで、上に書いたとおり、黄奈子は自分が美術科にいる意味を見つけたのです。

「まだ美術を心から好きになれない」けど、美術科に居たい。

 

「卵にヒビが入る」、それが黄奈子の将来にとってどれほど大きな影響を与えたかは語るまでもないでしょう。

 

酒井桃音と竹内黄奈子は「間違い」である「どうして!?」で、決して間違いじゃない出会いを見つけました。

そしてそれはまだ「ヒビが入った」ばかり、始まったばかりなのです。

 

 

「酒井桃音と竹内黄奈子」は以上です。

 

最後まで閲覧ありがとうございました。